FDG-PETで認知症の検査ができる仕組み

02/27/2025

近年、認知症の早期発見や診断技術が進化しており、その中でもFDG-PET(フルオロデオキシグルコース陽電子放射断層撮影)は重要な役割を果たしています。本記事では、FDG-PETを用いた認知症の検査方法とその仕組みについて解説します。

FDG-PETとは?

FDG-PETは、ブドウ糖に類似した放射性薬剤(FDG: フルオロデオキシグルコース)を用いた画像診断法です。脳は、ほぼすべてのエネルギーをブドウ糖から得ているため、ブドウ糖代謝の分布を見ることで、脳のどの部分が機能しているのかが分かります。FDGは脳のブドウ糖代謝活動が活発な領域に集まるのでその分布をPETスキャンで可視化することで、脳の機能状態を評価します。

認知症診断におけるFDG-PETの役割

認知症では、脳の特定の部位でブドウ糖代謝の低下が起こります。FDG-PETを使用すると、以下のような特徴的なパターンが観察されます。

  • アルツハイマー型認知症(AD): 側頭葉や頭頂葉、後部帯状回(PCC)などの代謝が低下
  • レビー小体型認知症(DLB): 後頭葉の代謝低下
  • 前頭側頭型認知症(FTD): 前頭葉や側頭葉の代謝低下

これらの代謝パターンを分析することで、認知症の種類を鑑別する手がかりとなります。

FDG-PET検査の流れ

  1. 放射性薬剤の投与: FDGを静脈注射
  2. 安静時間(約30~60分): FDGが脳に取り込まれるのを待つ。この間、脳内のFDGの分布は被験者の活動状態に影響を受けるため、できるだけ安静に過ごすことが求められます。例えば、会話や読書などの脳を活発に使う活動は避け、静かに目を閉じるなどして一定の状態を保つことが重要です。
  3. PETスキャン撮影(約20分): 代謝活動の画像を取得
  4. データ解析と診断: 専門医が画像を解析し診断

FDG-PETのMRIとの比較

FDG-PETとMRIはともに脳の画像診断に用いられますが、それぞれ異なる情報を提供します。

  • 機能的評価: FDG-PETは脳の代謝活動を可視化できるため、認知症の早期診断に適しています。一方、MRIは脳の構造を詳細に捉えることができますが、代謝の変化は評価できません。
  • 早期発見: MRIは明らかな脳萎縮が起こってから異常を捉えることが多いですが、FDG-PETは脳の機能低下をより早い段階で検出することが可能です。

FDG-PETのメリットと限界

メリット

  • 早期の段階で認知症の兆候を捉えられる
  • 認知症の種類を識別しやすい
  • MRIやCTではわからない脳機能の変化を評価できる

限界

  • 実施できる医療機関が限られている
  • 放射線被ばくのリスクがある(ただし微量)

まとめ

FDG-PETは、脳の代謝変化を視覚化することで、認知症の早期発見や診断に役立つ重要な検査方法です。特にアルツハイマー型認知症などの種類の鑑別に有効であり、適切な治療方針の決定にも貢献します。ただし、限界もあるため、他の診断法と組み合わせて総合的に評価することが重要です。

認知症の早期発見が求められる中、FDG-PETの活用がますます注目されています。興味がある方は、専門医に相談してみるとよいでしょう。