脂肪肝の原因と治療法|生活習慣を見直して改善するための具体的な方法とは?

07/01/2025

脂肪肝は、肝臓に脂肪が過剰に蓄積された状態を指し、放置すると肝炎や肝硬変、さらには肝癌へと進行するリスクがあります。近年、健康診断の超音波検査などで偶然発見されることが多く、特に働き盛りの中高年層においてその頻度が高まっています。

脂肪肝の原因にはさまざまなものがありますが、臨床的に重要なのは「その原因に応じた治療方針を選択する」ことです。この記事では、脂肪肝の原因の分類と、それぞれに適した対応策について詳しく解説します。

先天的な脂肪肝と後天的(生活習慣による)脂肪肝

脂肪肝の原因は大きく分けて、先天的な代謝異常によるものと、生活習慣に起因するものの2つに分類されます。

前者の代表例には、先天性代謝異常(酵素欠損症)による脂質代謝の障害があり、専門的な検査と医療機関での評価が必要です。これは比較的稀なケースですが、生活習慣を見直しても改善しない脂肪肝がある場合には、こうした遺伝的背景の評価を受けることが望まれます。

一方、現代の脂肪肝の多く(推定90%以上)は、生活習慣が原因とされています[1]。そのため、まずは自分自身の生活習慣を見直し、原因となりうる行動を見つけることが、もっとも現実的で有効な第一歩となります。

生活習慣が原因の脂肪肝──2つの主要なタイプ

生活習慣による脂肪肝には、主に2つのタイプがあります。

① 糖質の過剰摂取による「異所性脂肪」としての脂肪肝

日常的に糖質を多く摂取していると、消費しきれなかった余剰の糖が肝臓で脂肪酸へと変換されます。この脂肪は本来、脂肪細胞に蓄えられますが、過剰になると肝臓や膵臓、心臓周囲などに異所性脂肪として沈着します。この状態が脂肪肝です[2]。

治療の基本は「摂取と消費のバランス調整」

このタイプの脂肪肝を改善するためには、「糖質の摂取量を減らす」こと、そして「糖質を消費するための運動、特に筋トレ」を行うことが効果的です。糖質を筋肉で消費させることで、肝臓に蓄積する前にエネルギーとして使い切ることが可能になります。

ある研究では、週3回以上の筋トレと糖質制限を組み合わせることで、非アルコール性脂肪肝(NAFLD)の改善が有意に見られたことが示されています[3]。

② 特定の物質の連日摂取による「肝酵素機能の障害型」

もう一つの原因は、アルコールや薬物、サプリメントなどを連日摂取し続けた結果、肝臓でそれらの解毒を担当する酵素が枯渇してしまい、肝細胞が障害を受けて脂肪変性を起こすというものです。

かつては脂肪肝の多くがアルコール性でしたが、近年は「非アルコール性脂肪肝(NAFLD)」「薬物性脂肪肝」の割合が増えています[4]。

慢性疾患の薬による影響

中高年では高血圧や高脂血症、糖尿病といった生活習慣病に対して薬を毎日服用している方が多くいます。ほとんどの薬剤は肝臓で代謝されるため、長期服用によって肝酵素の処理能力を超えることがあるのです。

この場合、勝手に薬を中止するのではなく、必ず主治医と相談し、肝機能のモニタリングを行うことが必要です。

自己判断で摂取しているサプリメントやプロテインに注意

最近では、サプリメントや筋肉増強用プロテインの連用が脂肪肝の原因となっているケースも増えてきました。これらは「健康に良い」とされている一方で、成分のすべてが肝臓で代謝されるため、負担となることがあります

このタイプの脂肪肝は、原因となっている物質を中止することで比較的早期に改善が見込めます。特に自己判断で服用しているものについては、一度中止して様子をみることが重要です[5]。

まとめ:まずは自分の生活をチェックする

脂肪肝の診断を受けたら、まずは自分の生活習慣を以下のような視点で見直してみてください。

  • 糖質中心の食生活になっていないか?
  • 運動不足になっていないか?
  • アルコールを毎日摂っていないか?
  • 常用している薬の量や種類は?(主治医に相談)
  • サプリメントやプロテインなどを自己判断で摂っていないか?

これらに思い当たる点がある場合は、それを見直すだけで脂肪肝は十分に改善可能です。逆に生活習慣に大きな問題がないにもかかわらず改善しない場合は、先天的な代謝異常(酵素欠損)などの可能性も考慮し、消化器専門医の受診を検討しましょう。

引用文献

  1. Younossi ZM, et al. Global epidemiology of nonalcoholic fatty liver disease—Meta-analytic assessment of prevalence, incidence, and outcomes. Hepatology. 2016;64(1):73–84.
  2. Samuel VT, Shulman GI. The pathogenesis of insulin resistance: Integrating signaling pathways and substrate flux. J Clin Invest. 2016;126(1):12–22.
  3. Hallsworth K, et al. Resistance exercise reduces liver fat and its mediators in non-alcoholic fatty liver disease independent of weight loss. Gut. 2011;60(9):1278–1283.
  4. Chalasani N, et al. The diagnosis and management of non‐alcoholic fatty liver disease: Practice guidance from the American Association for the Study of Liver Diseases. Hepatology. 2018;67(1):328–357.
  5. Navarro VJ, Khan I. Management of drug-induced liver injury (DILI) in the real world. Clin Liver Dis. 2019;23(3):527–541.