尿管結石の仕組みと予防法──結晶が“石”になるまで

突然襲いかかる、のたうち回るような腰の痛み。その原因が「尿管結石」だったという経験を持つ方は少なくありません。実はこの病気、日本人男性のおよそ7人に1人、女性でも15人に1人が一生のうちに経験するとされており、再発も多いことで知られています(厚生労働省, 2021)。尿管結石のできる仕組みを理解することで、その予防について理論的に考えてみましょう。

尿管結石とは?──腎臓で生まれ、尿管で詰まる

尿管結石とは、腎臓でできた石(結石)が尿管に落ち込み、尿の流れをせき止めることで激痛や血尿を引き起こす病気です。結石はシュウ酸カルシウムや尿酸などの成分からできており、大きさは数mmから数cmまで様々。非造影CTなどの画像検査で診断されます。

結石の成分と種類

尿管結石の主な成分は以下の通りです:

  • シュウ酸カルシウム結石(約70–80%)
  • リン酸カルシウム結石
  • 尿酸結石
  • シスチン結石(遺伝性)
  • ストルバイト結石(感染性)

この中で最も多いのがシュウ酸カルシウム結石です。食事や代謝により尿中のシュウ酸やカルシウムの濃度が高まると、それらが結合して結晶化し、やがて大きな結石となっていきます。一見、突然できたように見える結石ですが、これらの結晶は、病気の人に突然発現するものではなく実は、健康な人でも尿の中には常に微細な結晶(シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウムなど)が存在しています。これは「生理的結晶尿」と呼ばれ、普段は尿と一緒に体外へ排出されるため、まったく問題ありません。しかし次に述べるようなメカニズムで、尿中の結晶が腎臓内に引っかかって成長することで、CTに写る“結石”になるのです。

腎臓内での「定着」が結石形成のカギ

結晶が問題となるのは、次の条件が揃ったときです:

  1. 尿中の結晶成分が高濃度になる(過飽和状態)
  2. 結晶が腎乳頭や集合管の上皮に付着する
  3. 尿の流れが停滞し、結晶が洗い流されにくくなる
  4. 有機マトリックス(たんぱく質)による核形成と保護
  5. 他の結晶が付着・成長してサイズが大きくなる

特に重要なのが、腎乳頭表面に形成される「Randall’s plaque」と呼ばれるカルシウム沈着部位です。これが結晶の足場となり、微細な結晶がそこで捕捉されて成長していきます。


CTで見える「結石」になるまで

腎臓内で捕捉された結晶は、さらに同種あるいは異種の結晶と結合・集積して大きくなります。このプロセスを以下のように整理できます:

  • 核形成(nucleation):尿中で最初の微小な結晶が発生
  • 成長(growth):単一の結晶が周囲の成分を取り込んで大きくなる
  • 凝集(aggregation):複数の結晶がくっつき、大きな塊になる
  • 固定化(retention):腎内構造に定着し、排出されずに残る
  • 可視化(detection):5mm以上に成長すると、非造影CTなどで明確に検出可能

このように、尿中には常に微細結晶が排出されているものの、腎内で引っかかり、十分な時間と条件が整うと、CTで見えるほどの「結石」として形成されるのです。

尿の酸性化がシュウ酸カルシウム排泄を促進

シュウ酸カルシウムが排泄されるメカニズムについては、ほうれん草、チョコレート、ナッツ類などの過剰摂取による高シュウ酸食に加えて、塩分過多動物性たんぱく質のとりすぎが重要です。塩分はカルシウムの尿中排泄を増加させるため結石のリスクとなります。また肉や魚、卵などの動物性たんぱく質を多く摂ると、尿が酸性に傾きます。これは、動物性食品に含まれる**硫黄アミノ酸(メチオニン・システイン)**の代謝によって硫酸が生じるためですが、 酸性尿は、尿酸やシュウ酸カルシウムの結晶が析出しやすい環境となります。その結果として、尿酸結石やカルシウム結石が形成されやすくなるのです。

結石を防ぐ生活習慣とは?

誰の尿にも存在する微細な結晶が、腎臓内で固定され周囲の成分を取り込んで成長するという仕組みが理解できれば以下のような生活習慣が、結石予防に効果的であることが容易に理解できます。:

1. 水をたくさん飲む

最も基本で効果的な対策は水分摂取の強化です。

目標:1日2〜3リットルの水分摂取 → 尿量2リットル以上

  • 尿を薄めることで、結晶の形成を防げます
  • 色が薄く透明な尿が1日5〜6回出ていれば合格

2. 適度な運動

よく知られた民間療法として水を飲んで縄跳びというのがありますが、結晶の腎臓での固着を予防するためには運動によって腎臓内の尿流を促すことが有効であることは仕組みがわかれば理論的に明らかです。

3. 食事バランスの見直し

  • 動物性たんぱく質は控えめに(体重×1g程度)
  • シュウ酸の多い食品は取りすぎ注意(ほうれん草・チョコ・紅茶など)
  • カルシウムは適度に摂る(食品から600〜800mg/日)
  • 塩分は1日6g未満
  • 野菜や果物でクエン酸を補う

まとめ

尿管結石は、もともと誰の体にも生じている微細な結晶が、腎臓の中に留まり、成長して石になった結果です。逆に言えば、

  • 結晶を作りにくい体質に整える
  • 作られても「育たない」環境にする

これらの工夫をすれば、結石は防ぐことができるのです。

参考文献

  1. Kok DJ, Khan SR. Calcium oxalate nephrolithiasis, a free or fixed particle disease. Kidney Int. 1994;46(3):847-854.
  2. Evan AP, et al. Randall’s plaque of patients with nephrolithiasis begins in basement membranes of thin loops of Henle. J Clin Invest. 2003;111(5):607–616.
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  4. Hesse A, et al. The influence of dietary factors on the risk of urinary stone formation. Scand J Urol Nephrol Suppl. 1999;201:30–38.
  5. 日本泌尿器科学会. 尿路結石症診療ガイドライン(2017年版)
  6. 厚生労働省. 国民生活基礎調査(2021年)