大腸癌の早期発見と予防:PET/CTを活用した賢い戦略とは
大腸癌は日本人に多いがんの一つであり、早期発見と予防の重要性がますます高まっています。近年、PET/CTを用いた全身検査が注目されていますが、「本当に大腸癌もPET/CTで見つかるの?」「やっぱり内視鏡検査の方が確実なのでは?」と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
この記事では、大腸癌の早期発見におけるPET/CTの有用性と限界、そして予防に向けた生活習慣の整え方について、医学的理論に基づいてご紹介します。
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PET/CTと内視鏡、どちらが賢い選択か?
胃がんでは、FDG PET/CTが有効でないことが知られており、それに倣って「大腸癌も内視鏡のほうが良い」とする意見が見受けられます。しかし、これは少々短絡的です。大腸癌は糖代謝が亢進しており、FDGを取り込みやすい性質があります。このため、PET/CTは大腸癌の検出に比較的優れており、条件が整えば早期段階でも検出可能です(Kubota K et al., Ann Nucl Med, 2001)。FDG PET/CTで全身スクリーニングを行うことで、大腸以外の臓器も一度に検査でき、内視鏡の侵襲性を回避しつつ効率的な検出が可能になります。
ただし、大腸のFDG PET/CT検査については固有の注意点が1つあります。PET/CTで使用されるFDGは、糖尿病の治療薬(特にメトホルミン)や便秘薬の影響によって、大腸に生理的に集積することがあるのですが、このような場合にはがんが無くても集積が認められたり、逆に画像が不鮮明になって検出率が低下したりするリスクがあります(Lee JW et al., Clin Imaging, 2016)。そのため、通常の状態で撮影されたPET/CTであれば、大腸癌の検出は十分に可能ですが、以下のような戦略が賢明です:
- まずPET/CTを施行して、大腸を含む全身をチェック
- 大腸に異常集積がある、または画質が不良な場合に限って内視鏡検査を追加する—

内視鏡検査はより小さな病変も発見可能なため最初から内視鏡でスクリーニングすべきという意見もありますが、前処置を含めた検査時の身体への負担が大きいためスクリーニングには適していません。また大腸内視鏡検査は大腸にしか使えず、他の臓器にがんがあってもわからないため、全身スクリーニングの意味ではPET/CTに軍配が上がります。大腸癌はある程度の大きさに育ってからでも治療可能ながんのため、「PET/CTで検出できる程度に育ってからでも治療に間に合う」という現実を踏まえれば、PET/CTでスクリーニング→必要に応じて内視鏡追加という手法は非常に理にかなっています。
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大腸癌予防の基本:代謝と便通を整える
大腸癌の予防には、生活習慣の改善が欠かせません。特に重要なのは以下の2点です。
1. 糖の摂取と消費のバランスを整える
大腸癌はブドウ糖を大量に消費するがんです。そのため、糖質過多の生活(高GI食品、過食、清涼飲料水の多用)はリスク要因となります(Warburg O., Science, 1956)。糖代謝のバランスを整えるためには:
- 白米や白パンなどの高GI食品を控える
- 野菜→たんぱく質→炭水化物の順に食べる
- 血糖値の急上昇を避ける
といった食事習慣の見直しが推奨されます。
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2. 便通を整える
大腸にとって、スムーズな排便は非常に重要です。便秘によって便が長時間腸内に留まると、有害物質が腸壁に作用する時間が延び、発癌リスクが高まるとされています(Watanabe T et al., Cancer, 1990)。便通を整えるには:
- 十分な水分摂取(1.5〜2リットル/日)
- 食物繊維(野菜・海藻・きのこ類など)の摂取
- 軽い運動や腹部マッサージ
- 自律神経に刺激をいれて、バランスを整える(ストレス対策)
といった習慣が効果的です。特に、交感神経・副交感神経の切り替えを意識し、消化管が“動いたり止まったり”するリズムを作っておくことが、腸の健康には不可欠です。
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おわりに
大腸癌は早期に発見すれば十分に治療が可能な疾患です。しかし、内視鏡検査を定期的に行うことは負担が大きく、全身のがんをカバーできないという課題があります。胃がんとは異なりPET/CTは大腸癌がんのスクリーニングに有効であるという性質を利用して、画質や集積の状況に応じて内視鏡検査を組み合わせることで、効率的かつ実用的な検査戦略が実現できます。また、日常生活の中で糖代謝と便通を整える習慣を意識することが、発症リスクの低減につながります。
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引用・参考文献
- 厚生労働省「人口動態統計」令和4年(2022年)
- Kubota K, et al. Ann Nucl Med. 2001.
- Even-Sapir E, et al. Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2004.
- Lee JW, et al. Clin Imaging. 2016.
- Warburg O. Science. 1956.
- American Cancer Society. “Diet and Physical Activity: What’s the Cancer Connection?” 2020.
- Watanabe T, et al. Cancer. 1990.
















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