がん検診で偶然見つかる画像所見とは?その意味を正しく理解するために
CT検査やMRIなどを用いたがん検診では、目的である「がんの有無」以外にも、しばしば思いがけない画像所見が見つかることがあります。これらは「偶発所見(incidental findings)」と呼ばれ、必ずしも病気とは限らないものの、受診者にとっては不安の原因となることが少なくありません。放射線科医として検診後に質問を受けることが多いため、この記事では代表的な偶発所見とその医学的な意味を整理してみます。
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偶発所見が生じる理由と分類について
がん検診で行われるCTやMRIは、がんの有無を調べることを目的としています。そのため、画像に映っていてもがんと無関係で臨床的意義が乏しいものは記載されない場合があります。逆に、放射線科医の裁量で「知っておいた方が良い」と判断された所見はレポートに記載されます。つまり、検診結果に書かれた偶発所見は「臨床的にある程度の意味を持つ可能性がある」と考えられますが、その多くはすぐに治療を要するものではありません。本記事では便宜上、偶発所見を「B判定」と「C判定」に分けて説明します。
- B判定:基本的に病的意味は少なく、経過観察や治療を必要としないもの。日常生活に大きな影響を及ぼす可能性は低いと考えられる所見です。
- C判定:生活習慣病や慢性疾患の進展に関わる可能性があり、注意が必要なもの。場合によっては追加検査や生活習慣改善が推奨されます。
この区分は学術的な公式分類ではなく、受診者が理解しやすいようにした便宜的なラベルである点にご留意ください。
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カテゴリー1:加齢現象に関連する所見
加齢とともに多くの人に見られる変化で、自覚症状がないことがほとんどです。ただし、程度によっては成人病や慢性疾患の背景となり、時に体調不良の原因ともなります。
- 憩室(B/C判定)
大腸に多く見られますが、食道、十二指腸、膀胱にも出現することがあります。大半は無症状ですが、炎症(憩室炎)や出血を起こすことがあるため注意が必要です。
- 結石(C判定)
胆石や腎結石は検診で偶然見つかる代表例です。小さな結石は症状がなくても、大きくなると疝痛や感染の原因となることがあります。
- 脊椎変性(B/C判定)
椎間板ヘルニアや靱帯骨化など、脊椎の加齢変化がCTやMRIで描出されます。症状がなければ問題ないですが、進行すると神経圧迫の原因になります。
- 肺野の間質肥厚・肺線維症(C判定)
慢性的な炎症や喫煙歴に関連し、進行性の呼吸機能障害につながる場合があります。
- 異所性脂肪(C判定)
脂肪肝や膵脂肪浸潤は生活習慣病と関連し、糖尿病や心血管疾患リスクを高めます。
- 前立腺肥大・子宮筋腫(B/C判定)
良性腫瘍として一般的で、多くは経過観察で十分ですが、症状が強い場合は治療対象となります。
解説
このカテゴリーに含まれる所見は「老化に伴う身体変化の一部」と理解するとわかりやすいでしょう。必ずしも危険なものではありませんが、進行例では生活習慣病や臓器障害の一因となることがあります。
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カテゴリー2:炎症の痕跡や慢性炎症による変化
過去の炎症が治癒した結果残った痕跡、あるいは現在も続く慢性炎症による変化です。急性期を過ぎると自覚症状が乏しく、既往歴に記憶がなくても不思議ではありません。
- 炎症性瘢痕、微細結節や石灰化した肉芽種(B判定)
肺や腎、リンパ節などに小さな瘢痕や石灰化が残ることがあります。基本的に無害で経過観察は不要です。
- 血管壁の石灰化(C判定)
冠動脈や大動脈に沈着する石灰化は慢性の血管炎に起因する動脈硬化の指標です。動脈内壁の粥状硬化による狭窄を伴うことが多いため心筋梗塞や脳梗塞リスクと関連します。
- 脳白質病変(C判定)
MRIでしばしば見られる小さな虚血性変化です。加齢と高血圧に伴い脳内の細い血管内腔が狭窄して小さな梗塞巣が起こると考えられます。増加すると、将来的な認知機能障害や脳卒中リスクと関わります。
解説
このカテゴリーは「炎症が残した足跡」と言えます。治癒したものは心配ありませんが、血管や脳にみられる慢性炎症関連の所見は、生活習慣病との関わりが強いため進行させないためには生活習慣の見直しが必要です。
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カテゴリー3:先天性または原因不明の変化
生まれつき存在する、または原因が不明ながら高頻度にみられる所見です。ほとんどが良性であり、経過観察も不要です。
- 嚢胞(B判定)
脳のくも膜嚢胞、甲状腺嚢胞、肝嚢胞、腎嚢胞など、多臓器に発生します。内容は液体であり、がんとは異なります。
- 肝血管腫(B判定)
肝臓で最も多い良性腫瘍で、がん化することはありません。
- 胆嚢腺筋症・胆嚢ポリープ(B判定)
一般的に小さいものは良性であり、経過観察で十分です。
解説
このカテゴリーは「良性の体質的変化」に該当し、がんや生活習慣病と直接の関わりはほぼありません。過剰に心配する必要はない所見群です。
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まとめ
がん検診で偶然見つかる画像所見は珍しいことではなく、大多数は深刻な意味を持ちません。しかし中には生活習慣病や加齢性疾患のサインとなる場合があるため、放置せず主治医と相談することが望まれます。
重要なのは、「偶発所見はがん検診の本来の目的外であることから放射線科医師の裁量の範囲内で記述されているということ。詳細を知るためには改めてそのための検査を受ける必要があるということ」という点です。
検診で指摘を受けた際には、不必要に不安になるのではなく、所見の医学的背景を理解し、自身の健康管理に役立てることが大切です。
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参考文献
- Hricak H, et al. Managing Incidental Findings on Abdominal and Pelvic CT and MRI, Part 1. Radiology. 2011;261(1): 21-39.
- Berland LL, et al. Managing Incidental Findings on Abdominal CT: White Paper of the ACR Incidental Findings Committee. J Am Coll Radiol. 2010;7(10):754-773.
- Wardlaw JM, et al. White matter hyperintensity in MRI: What do they mean? J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2015;86:1066–1074.
- European Society of Radiology (ESR). ESR Essentials: Incidental Findings. Insights Imaging. 2022;13:25.

















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