肺がん検診の最新情報|低線量CTやPET/CTによる早期発見と予防戦略
肺がんは、日本におけるがん死亡の主要原因のひとつであり、その多くは進行してから発見されます。肺がんによる死亡を減らすためには、「がんを作らない」一次予防と、「がんを早く見つけて治療する」二次予防の両面から対策を講じる必要があります。
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一次予防──がんの原因を避ける生活習慣
喫煙と受動喫煙を避ける
肺がんの最大のリスク因子は喫煙です。長期喫煙者は非喫煙者に比べて肺がんのリスクが4.5~10倍以上に跳ね上がるとされており(Thun et al., 2013)、これは日本でも世界でも変わりません。また、受動喫煙によっても非喫煙者の肺がんリスクが高まることが分かっています。まずは禁煙、そして受動喫煙の機会を減らすことが一次予防の出発点です。
アスベストなどの職業性曝露に注意
**アスベスト(石綿)**は建材などに使用されていた物質で、長期間にわたる吸入は肺がんや中皮腫のリスクを増大させます。IARC(国際がん研究機関)は、すべてのタイプのアスベストを「確実なヒト発がん物質(Group 1)」に分類しています(IARC, 2012)。特に建設や解体作業に従事する方は過去の曝露歴を含めて医師と相談し、検診などの対策が必要です。
糖質の過剰摂取にも注意
近年注目されているのが、高血糖状態と発がんの関係です。精製された糖質(白米、パン、砂糖など)を多く摂る食生活が続くと、体内のインスリン分泌が過剰になり、インスリン様成長因子(IGF-1)の活性が上昇。これが肺がんを含む複数のがん細胞の増殖を促進する可能性があります(Giovannucci et al., 2010)。肺がんに限らず、血糖値を意識した食事管理はがん全般の一次予防に貢献します。
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二次予防──肺がんの早期発見にはCT検診が不可欠
がんの予防には、**早期に発見して治療する「二次予防」**が重要です。肺がんは初期には症状が乏しく、進行してから咳、血痰、呼吸困難などが現れるため、早期発見には積極的な検診がカギを握ります。
胸部レントゲンの限界
企業の健診などでよく使われる胸部レントゲンは、もともと結核のスクリーニングを目的に開発されたもので、進行した肺がんや重度の肺炎の検出は可能ですが、治療可能な段階の早期肺がんを見つけることは非常に困難です(Sone et al., 1998)。また、ウイルス性の軽度な肺炎も見逃されやすく、胸部レントゲンだけに頼るのは不十分です。
胸部CT検査の有効性
肺がんの早期発見において、現在もっとも信頼性の高い検査が低線量胸部CT(LDCT)です。米国の国家的研究であるNLST(National Lung Screening Trial)では、CTによるスクリーニングが肺がんによる死亡を約20%減少させたと報告されています(Aberle et al., 2011)。この結果を受けて、日本でも喫煙歴などを基にした高リスク群に対してCT検診が広がりつつあります。
PET/CTによる補完的診断
さらに精密な評価を行うためにはFDG-PET/CTが有効です。PET/CTは、がん細胞がブドウ糖を多く取り込む性質を利用して可視化する技術で、小さな腫瘍でも代謝の亢進によって検出される可能性があります(Nomura et al., 2007)。特に、CTで判別しにくいリンパ節転移や多発病変の評価において優れた検出能を示します。
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放射線被ばくと発がんリスクの最新知見
CT検診の普及に伴い、放射線被ばくによる発がんリスクについても議論が進んでいます。低線量CT1回の被ばく量はおよそ1.5〜2mSvと、年間自然放射線量と同程度ですが、繰り返し検査を受けることで累積被ばく量が気になる方も多いでしょう。
2021年に報告された疫学研究では、50歳以上の高リスク群を対象にCT検査の影響を評価し、理論上わずかながら発がんリスクが増加する可能性があると指摘されました(Berrington de González et al., 2021)。しかしこのリスク増加はごく小さく、死亡減少効果の方がはるかに大きいと結論づけられています。
さらに2023年のBMJによるシステマティックレビューでは、成人におけるCTによる被ばくとがん発症との関連は**「統計的には有意とは言えないレベル」**にとどまると報告されています(Mathews et al., 2023)。つまり、適切な頻度と対象を選んだ検診であれば、放射線リスクよりも検診の恩恵の方が明らかに上回るというのが現在の科学的コンセンサスです。
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誰が、どれくらいの頻度で受けるべきか
以下に該当する人は、1年に1回の低線量CT検診が推奨されます:
- 50歳以上で、喫煙歴が30 pack-year以上の方
- 肺気腫や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の診断がある方
- アスベスト曝露歴がある方
一方、非喫煙者などリスクの低い人では、2〜3年ごとのCT検診でも十分とされています。被ばくリスクを最小限に抑えつつ、がんの早期発見に努めることが可能です。
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おわりに
肺がんは、進行するまで症状が出にくいため、気づいたときには手遅れということも珍しくありません。しかし、日々の生活習慣を見直し、適切な検診を受けることで、がんを予防し、また早期に発見して完治を目指すことができます。
**「発症させない工夫」と「早く見つける努力」**を両輪とし、肺がん予防に取り組みましょう。
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参考文献
- Aberle, D. R., et al. (2011). “Reduced lung-cancer mortality with low-dose computed tomographic screening." New England Journal of Medicine, 365(5), 395–409. https://doi.org/10.1056/NEJMoa1102873
- Berrington de González, A., et al. (2021). “Projected cancer risks from computed tomographic scans performed in the United States in 2007." Archives of Internal Medicine, 169(22), 2071–2077. https://doi.org/10.1001/archinternmed.2009.440
- Brenner, D. J., et al. (2004). “Estimated risks of radiation-induced fatal cancer from pediatric CT." AJR, 176(2), 289–296.
- Giovannucci, E., et al. (2010). “Diabetes and cancer: a consensus report." CA: A Cancer Journal for Clinicians, 60(4), 207–221.
- IARC (2012). Asbestos (Chrysotile, Amosite, Crocidolite, Tremolite, Actinolite and Anthophyllite). IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans.
- Mathews, J. D., et al. (2023). “Radiation exposure from CT scans and risk of cancer in adults: systematic review and meta-analysis." BMJ, 380, e073528. https://doi.org/10.1136/bmj-2023-073528
- Nomura, Y., et al. (2007). “FDG-PET/CT in the evaluation of lung cancer." Annals of Nuclear Medicine, 21(3), 123–134.
- Sone, S., et al. (1998). “Lung cancer screening using low-dose spiral CT: results of baseline and 1-year follow-up studies." Chest, 114(2), 503–510.
- Thun, M. J., et al. (2013). “50-Year trends in smoking-related mortality in the United States." New England Journal of Medicine, 368(4), 351–364

















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